税法免除大学院入試のための研究計画書作成のポイント




税理士資格を取得するためには、税理士試験を合格する必要がありますよね。

一方で、税理士試験の合格以外にも、税理士になるルートはいくつか存在します。その中で、税理士試験の難化及び長期化に伴い、近年その需要が高まっているのが、修士の学位取得による税法科目の免除、いわゆる「税法免除」「院免」と呼ばれるルートです。

修士の学位は、一般的に大学院へ進学し、会計又は税法に関する修士論文を提出することで認められます。

大学院へ入学するためには、当然大学院入試に合格する必要がありますが、その入試の際に求められるのが「研究計画書」です。

大学院受験生にとって、この研究計画書の作成は非常にやっかいなものです。というのも、大学からの情報は非常に限定的で、関連書籍も少なく、かつウェブにも具体的な情報はなかなか公開されていません。

そこで、今回のブログでは、大学院入試に求められる研究計画書の作成方法について、私自身の経験を交えながら研究計画書の作成方法とそのポイントについて解説します。

私のスペックについて

研究計画書の作成方法を解説するにあたり、まずは、私自身のスペックについてご説明します。

私は2019年4月より都内の社会人大学院に進学を予定しており、大学院では税法に関する修士論文を執筆します。

当然ながら、一般入試を経て大学院入試に合格しましたので、研究計画書を作成た経験があります。とはいえ、私自身も研究計画書の作成方法が分からなかった受験生の一人で、ウェブ検索や関連書籍のリサーチに多くの時間を費やしてしまいました。

この点、河合塾などの予備校で研究計画書の作成をサポートするサービスが提供されていますので、予算に余裕がある方は、事前の情報収集等も含めて、予備校を利用するのが最も効率的な方法かと思います。(入試のために用意できる予算を大きく超えていましたので、私はこういったサービスは利用しませんでした。)

試行錯誤の結果、なんとか研究計画書を書き終えて、志望校の合格を勝ち取ることができましたが、このブログの情報を通じて受験生の方が効率よく研究計画書を作成できるお手伝いになればと考えています。

研究計画書作成のスケジュール

まずは研究計画書作成のスケジュールを紹介します。私の場合は以下のようなスケジュールで動いていました。

研究計画書の仕掛りから提出まではおよそ2ヵ月の期間をかけたことになりますね。私の場合は、研究計画書の出来具合が大学院入試の肝と理解していましたので、じっくり時間をかけてとりかかりましたが、早い方ですと1ヵ月くらいの時間があれば十分かと思います。

一方で、完成した研究計画書を推敲する時間を確保する必要がありますので、少なくとも1ヵ月程度の期間をみておくのが無難ではないでしょうか。

このスケジュールの項目に沿って、それぞれのポイントを紹介したいと思います。

テーマ探し

研究計画書は、大学院で執筆する論文の設計書と言い換えることができます。したがって、研究計画書を作成するには、まずは自分が執筆したい論文の研究テーマを考える必要があります。

そもそも税法免除のための大学院入学を目指す方には、次の2種類のタイプがあると考えられます。

  • 実務経験等を通じて、研究したいテーマを既に持っている方(税法免除はあくまでも副次的な効果)
  • 実務経験がない又は実務経験があったとしても、研究したいテーマを持っていない方(税法免除が主な目的)

私の場合は、どちらかと言えば前者に該当しますが、実感としては後者の方が多いのではないかと思います。

それぞれのケース別にテーマ探しの方法について解説します。

研究テーマがある場合

既に研究テーマがあるのであれば、そのテーマを採用しましょう。

税法免除のための大学院入試では、社会人の方が多いと考えられますので、実務経験を通じて問題意識を抱えたり、気になったテーマがあることと思います。

研究及び論文の執筆は誰かに強制されるものではありませんので、決して書きやすいテーマに流されずに、自分の興味がある分野にフォーカスするのがいいでしょう。

ただし、その研究テーマが次のいずれかに該当する場合には留意が必要です。

  • スコープが広すぎる(「法人税について」等)
  • 先行研究が少なく、あまりにも先進的なテーマである
  • 既に類似する論文が多く執筆されている

これらの場合、研究計画書そのものの作成に行き詰まる可能性が生じます。

研究計画書はあくまでも論文の設計書です。また、大学院に合格した後に研究テーマを変更することもできますので、あまりテーマに縛られなくてもいいのですが、テーマ選びも研究の実行性の観点から採点対象に含まれる可能性もありますので、「このテーマで論文を書ききることができるか?」という点は突き詰めて考える必要があります。

研究テーマがない場合

研究テーマがない場合、次のステップでテーマを探してみるのがいいのではないでしょうか。

  • 興味のある税法を一つから二つピックアップする
  • その税法の中から興味ある論点を複数ピックアップする
  • その論点に関する論文や書籍を斜め読みする
  • さらに租税判例百選などからの判例の有無を確認する
  • 論点を一つから二つに絞る

まずは税法ベースでスコープを絞った後、論点別に興味のある分野を探るのが効率的かと思います。

恐らく、過去にその論点に関する論文が執筆されていますので、その論文を斜め読みしつつ、判例等も確認し、最終的なテーマを絞りましょう。

なお、この段階で論点を一つに絞ってしまうと、研究計画書の作成に行き詰まった時に大きく時間をロスしてしまいますので、複数の論点ストックを保有しておくことをお勧めします。

参考文献集めとその読み込み

テーマが決まったのであれば、そのテーマに関する参考文献や判例を読んで、知識を蓄えます。

参考文献の探し方について、最も効率がいい方法は、類似テーマを扱う論文末尾の参考文献リストを入手することです。どの論文にも論文の末尾に参考文献リストが記載されていますので、その中から自身のテーマにも使えそうな文献をピックアップしましょう。

私の場合、まずはウェブベースでいくつかの論文を探し、参考文献リストを入手した後、その中から十数冊を国会図書館で閲覧しました。

文献のタイトルだけでは中身は判断できませんので、実物を確認する必要がありますが、とは言え、すべての文献を購入するとなると無駄な出費がかさみますので、私は図書館を利用しました。普通の図書館には税法の専門書がおいていない可能性が高いため、国会図書館や大学の図書館を利用するのが良いかと思います。

また、関連する判例等も必ず確認しましょう。租税判例集や国税不服審判所の裁決事例が役に立つと思います。

こうして収集した参考文献を読み込み、選択したテーマに関する基礎知識を習得します。この時、あまりにも高度な文献や論文から入っても、内容を理解できない可能性がありますので、まずは書店で手に入るレベルの基本書から読み始めることをお勧めします。

実務経験等を通じて、既知の内容もあるかと思いますが、そのテーマに関する言葉の表現や概念などで意外な発見もありますので、まずは基礎固めということで、基本書から復習しましょう。




研究計画書執筆開始

論文テーマが決まり、参考文献を収集・読み込んだなら、いよいよ研究計画書を執筆します。

研究計画書執筆にあたっては、まずは大学院のインストラクションを確認しましょう。研究計画書の構成や記載ルール、枚数制限などが定められていますので、そのルールを逸脱しないように注意する必要があります。

後述しますが、内容に加え、形式面の要件をクリアしていることは非常に重要です。例えどんなに素晴らしい内容だったとしても、形式面の基準をクリアしない限り、その研究計画書の質が疑われますので、研究計画書の執筆前に、まずは形式面の要件を徹底的に確認しましょう。

研究計画書の構成は大学院のインストラクションに定められているケースとそうでないケースがあります。もし構成が定められているならそれに従えばいいのですが、そうでない場合は構成に困りますよね。

ご参考までに私の研究計画書の構成を紹介したいと思います。なお、こちらはあくでも参考ですので、形式面のルールは必ず各大学院所定のものに従ってください。

  1. 問題意識・研究テーマ
  2. 先行研究
  3. 研究の手順・方法
  4. 期待される成果
  5. 参考文献

問題意識・研究テーマ

まずは自身が抱える問題意識と選択した研究テーマについて概説します。この問題意識は、例えば実務経験を通じて得られたものであったり、または文献等から得られた示唆であったりしますが、「どういった研究の背景があり、どういった問題意識の下、なぜそのテーマを研究するのか」といった点を明確に説明しましょう。

「事実⇒問題⇒研究」といった流れがクリアであればあるほど、研究計画書の質は高まります。研究計画書の冒頭部分で、その研究計画書の質は決定されるといっても過言ではありませんので、丁寧に執筆することを心がけましょう。

先行研究

既に先行研究が存在する場合は、その論文と論文が得た示唆について概説します。

「その先行研究は〇〇であることを明らかにしたが、△△については引き続き検討が必要である」⇒「本研究では△△について検討を行う」などのストーリーがあると、よりその研究計画書の説得力が増すかと思います。

また、先行研究の存在を明らかにすることで、きちんとそのテーマについてリサーチしたことのアピールにもなります。とはいえ、ただ先行研究を列挙するのではなく、いくつかの先行研究をピックアップし、その先行研究の内容にも軽く触れることを心がけましょう。

研究の手順・方法

ここでは研究へのアプローチ方法を説明します。たとえば「タックスヘイブン対策税制」に関するテーマを選択した場合、日本だけではなく海外諸国との制度比較が重要になります。

そこで、研究の方法として「海外諸国との制度比較」というアプローチが採用されますが、その他にも研究へのアプローチは様々考えられますね。

研究計画書、ひいては研究そのもののアウトラインが描けていれば、そのアプローチは自ずと定まっているはずですので、どういったアプローチでそのテーマに接するのかを明確にすることを心がけましょう。

期待される成果

最後に、その研究によって期待される成果を明確にします。例えば、現行税制の問題点の指摘であったり、今後の税制改正への示唆であったりが考えられますが、「この研究をすることで、何が明らかになるのか」をアピールしましょう。

参考文献

最後に参考文献リストを作成します。なお、あくまでも内容を確認したもののみを記載し、数稼ぎのために読んでいない文献を載せてはいけません。

また、文献だけでなく、ウェブページも参考文献リストに掲載する必要がありますので、重要なソースであれば、正確に記載しておきましょう。

研究計画書1st draft完成/推敲

こうして研究計画書の執筆を開始し、先行研究や参考文献とにらめっこしながら、なんとか研究計画書が形になります。

ここまでかなりの時間を要していると思いますので、勢いよく完成と行きたいところですが、時間に余裕がある方は、ここで一旦研究計画書を寝かせてみましょう。

これは私自身の経験なのですが、集中して研究計画書を完璧に書ききったと思っても、数日後冷静に読み返すと、ロジックが分かりにくかったり、言いたいことがうまく伝わっていませんでした。

したがって、一度完成したと思っても、その時点ではあくまでも1st draftとして取り扱い、後日再度読み返してみることをお勧めします。改めて読み返してみると、その時になかった視点やアプローチを思いつくこともありますので、より研究計画書の質を高めるうえで、必要なプロセスではないでしょうか。

また、推敲の段階では、フォントやフォントサイズ、誤字脱字等の形式面は徹底的にチェックしましょう。私は一度紙で印刷し、赤ペンを持ちながら、一字一句精査しました。

というのも、形式面のミスは研究計画書全体のクオリティ低下に直結するためです。どんなに素晴らしい内容でも、誤字脱字が多い文章は信頼がおけないですよね。

研究計画書を書ききり、何度も何度も見返してやっと完成した!と思っても、最後の最後に形式面のミスがないかの確認は必ず怠らないようにしましょう。

研究計画書完成・提出

ここまでこれば研究計画書は完成です。あとは大学院入試書類とともに提出するだけですね。お疲れ様でした。

まとめ

今回は税法免除大学院における研究計画書の作成方法について、自身の例をベースにポイントを説明しました。

研究計画書はあくまでも大学院入試に必要な書類の一部であり、極端に言えば、入試のためだけに作成するものかもしれません。

しかし、本来の研究計画書は、自身が研究し、書きたい論文の設計図となるものですので、妥協せず、しっかり時間をかけて取り組みましょう。

また、大学院入試で行われる面接は、多くの場合、研究計画書をベースに行われますので、その面接の場に自信をもって望めるよう、質の高い研究計画書作成が大学院入試合格の一つのカギでもあると思います。

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