先日こんなニュースがTwitterのタイムラインに流れてきました。
これは香港から密輸した金(きん)を日本の金市場でさばくことで、消費税率8%分の利ざやをとるという昔ながらの手法です。
金の密輸により本来支払うべき消費税を免れ、日本の金市場で売却する際に8%の消費税を上乗せすることで、8%の利ざやを確保することができます。
消費税率が引き上げられた2014年にこの類の犯罪が増加したことから、2019年10月以降、消費税率が10%に引き上げられる際にも、この種の犯罪増加が懸念されています。
このような行為は当然ながら消費税法違反ですので、その行為に対し適切な消費税を納める必要がありますが、一方で所得税の取り扱いはどうなるのでしょうか。
金の密輸に限らず、あらゆる犯罪行為によって、犯罪者は金銭等の収入を得ていますが、今回はこの犯罪行為で得た収入に対する所得税の取り扱いについて解説します。
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犯罪によって得た収入の所得税法上の取り扱い
結論としては、犯罪によって得た収入も所得税法上の収入に該当し、所得税課税の対象となります。
所得税基本通達36-1を確認しましょう。
法第36条第1項に規定する「収入金額とすべき金額」又は「総収入金額に算入すべき金額」は、その収入の基因となった行為が適法であるかどうかを問わない。
この通り、所得税の基礎となる収入は、その基因となった行為の適法性は問わないとされています。
過去の所得税基本通達148では、「窃盗、強盗又は横領により取得した財物については所得税を課さない」としていましたが、課税所得の考え方の進展にともない、その収入の基因となる行為に関して、その権利確定の有無を問わないこととなりました。
つまり、所得税法上、犯罪により得た収入についても、毎年確定申告を行い、正しく納税しないといけないのです。
ただし、実際には、確定申告を行うような納税意識の高い犯罪者はいないでしょうし、何より申告することにより犯罪行為が露呈する可能性を考えると、犯罪者の犯罪にかかる確定申告はこの世に存在しないかもしれません。
所得の種類は?
たとえばその犯罪行為を生業としているのであれば、事業所得に該当し、一時的な犯罪行為であれば、雑所得に該当すると考えられます。
生業となる犯罪行為とは、たとえば常習的な振り込め詐欺犯や窃盗犯などが考えられます。とはいえ、所得税の各種特典を受けるために、所得税の青色申告承認申請書を提出することはないでしょう。
あの人のあの行為も所得税の課税対象
ブラックジャックが受け取る医療報酬
ブラックジャックは医師免許を保有していないにもかかわらず、報酬を得て医療行為を行っています。
医師法第17条では、「医師でなければ医業をなしてはならい」としていますので、ブラックジャックは医師法に違反しているものの、その医療報酬は所得税の課税対象となります。
ブラックジャックの医療行為は、独立的かつ反復継続的に行われているので、医療報酬は事業所得に該当すると考えられます。
毎回高額な報酬を請求していますので、おそらく最高税率の45%が適用されますが、一方で必要経費も多い(モーターボートや病院の買取など)ため、収入に対して所得はある程度圧縮されている可能性があります。
ルパン三世一味が盗んだ財宝
説明するまでもなく、ルパン三世一味は「窃盗罪」や「強盗罪」、「器物損壊罪」などの犯罪行為を通じて目当ての財宝を取得しています。
次元大介や石川五エ門などの仲間の取り分に応じて、財宝の時価換算額が収入として按分されます。なお、所得の区分は事業所得に該当すると考えられます。
メルセデスベンツやS&W M19 コンバット・マグナム、斬鉄剣などの愛用品は、財宝を盗むためにのみ使用することが明らかである限り、固定資産に計上され、減価償却を通じて費用化されます。
なお、ルパン一味の居住地は不明ですが、仮に日本の非居住者(主に海外で生活している)であり、かつ日本にPE(事務所等の施設)がない場合、海外で盗んだ財宝は日本の所得税の課税対象となりません。
一方、日本の居住者の場合、世界中のどこで財宝を盗もうと日本の所得税の課税対象となります。
まとめ
今回は、犯罪行為により得た収入の所得税の取り扱いについて解説しました。
犯罪行為による収入にも税金を課すことで、犯罪行為そのものに加え、税金というペナルティを同時に課すことが可能となります。
犯罪行為から税金を連想することは難しいですが、犯罪行為にも税金が課せられるということを知っておきましょう。