ふるさと納税が返礼規制へ ブラックリストの実務への影響は?




ふるさと納税がついに規制される方向で見直さることとなります。

ふるさと納税 ついに法規制 返礼品30%超の自治体除外

記事によれば、野田聖子総務相は、30%超の返礼品を用意する自治体をふるさと納税制度から除外する考えを表明しました。

この総務大臣の発言により、ふるさと納税による高額返礼品は、今年中に姿を消すものと思われます。

今回は、この総務大臣の発言が実務に与える影響について解説します。

総務省による調査の結果

平成30年9月11日に総務省が公表した「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」では、返戻割合3割超の返礼品を送付している自治体数の推移が明らかとなっています。

(出典:総務省 自治税務局市町村税課「ふるさと納税に係る返礼品の見直し状況についての調査結果」)

このレポートから、平成28年度には1,156団体が返戻割合30%を超える高額返礼品を用意していたところ、2度の総務大臣通知発出を経て、平成30年9月1日時点では、246団体にまで減少していることが分かります。

今回の野田総務相の発言は、この246団体に向けられたものであり、ふるさと納税の高額返礼品の撤廃を見越したものと考えられます。

そもそも、ふるさと納税による高額返礼品は、次の理由から問題視され続けてきました。

  • 返礼品を目的とした寄付が増え制度の趣旨から逸脱している
  • 高額の見返りを受けた住民のみが恩恵を受ける不公平が生じる

特に、東京23区や大阪、横浜などの個人住民税収が多い都市部の自治体は、ふるさと納税による税流出の打撃が大きく、ふるさと納税が本格的に認知され始めた2015年ごろから、常に問題提起を行ってきました。

(出典:総務省 自治税務局市町村税課「ふるさと納税に関する現況調査結果」)

総務省のレポートからも、東京や大阪、神奈川などの都市部から多くの税金が地方に流出していることが分かりますね。東京では、64万人がふるさと納税を利用し、645億円もの税金がこの制度によって控除されています。

また、ふるさと納税は「不公平な税制」な代表格です。「不公平」を言い換えると「税の逆進性」であり、つまり、年収が高い人ほど多くのメリットがある制度と言え、この点についても長く議論されています。

ふるさと納税の逆進性については、コチラの記事で詳しく解説しています。

ふるさと納税の逆進性を考える

2017年10月10日



ふるさと納税ブラックリストの実務への影響

では、実際にふるさと納税の対象外となる自治体(ふるさと納税ブラックリスト)が出てきた場合、実務的にはどのように対応するのでしょうか。

※なお、現時点では、総務大臣の発言があっただけで法的な拘束力はありません。今後国会の承認を経て、法整備されることとなります。

ブラックリストに記載された自治体へ寄付金を支出した場合、寄付金控除の対象から除外する方法として、次の2つが考えられます。

寄付金受領証明書の効力無効化

ふるさと納税により寄付金控除を受ける場合、自治体から発行される寄付金受領証明書を確定申告書に添付しますが(ワンストップ特例制度を利用しない場合)、ブラックリストに記載された自治体から発行される証明書を、税務署および市税課等が認識しないという方法が考えられます。

この場合、その寄付の証明がなされないため、寄付金控除は無効となり、結果としてふるさと納税の恩恵を受けられないこととなります。

例えば、ブラックリストに記載された自治体へ10万円の寄付をして5万円相当の返礼品を受け取った場合、本来であれば、10万円は寄付金控除の対象となるため、実質負担2,000円で5万円の経済的利益を享受できることとなります。

一方、10万円の寄付金控除が認められない場合、10万円を支払って5万円の返礼品を受け取っただけとなりますので、実質的に5万円の経済的損失が発生します。

自治体への寄付そのものを抑止する

法的根拠が乏しいため、実現の可能性は低いと考えますが、総務省の権限により、ブラックリストに記載された自治体に対する寄付そのものを抑止する方法も考えられます。

例えば、ふるさと納税を行う際、多くの方が「ふるなび」や「さとふる」などの専用ウェブサイトを利用していると思いますが、そういった業者に対し、「この自治体はブラックリスト入りしているため寄付金控除の対象とならない」と明記させることによって、間接的にその自治体への寄付を抑止することができます。

ブラックリストの問題点

納税者としては、シンプルにブラックリストに入った自治体の高額返礼品へは寄付しないことが肝要です。

しかし、ここで疑問なのが、ブラックリストに入った自治体の高額返礼品ではない返礼品にも制限をかけられるのでしょうか?

例えば、返礼品目的でなく、純粋にその自治体を応援したいという気持ちでふるさと納税を行いたくても、その自治体がブラックリストに入っていたら、寄付を躊躇してしまいます。

50%の高額返礼品Aと10%の通常返礼品Bがあった場合、通常返礼品Bにまで制限をかけるとしたら、それは今回の発言の趣旨を逸脱した対応と言えるでしょう。

一方で、徴税の実務を考えたときに、AとBのどちらに寄付したかを、税務当局側が把握する術がないことから、一括して自治体をブラックリスト化するという対応も理解できます。

したがって、総務省の言い分としては、「ブラックリスト化したら完全にふるさと納税の対象外になるから、高額返礼品は完全撤廃しなさい」ということなのかもしれません。

まとめ

総務大臣の発言を契機に、今後ブラックリスト作成が進められることが予想されます。

これにより、少なくとも年内には高額返礼品が姿を消すものと考えられますが、とはいえ返戻割合が30%としても、一定のメリットは享受できます。

特に個人の節税方法は限定されているため、(厳密にはふるさと納税は節税ではないものの)引き続き積極的に利用するのがいいのではないでしょうか。

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