ブロガーが海外移住した場合の税金はどうなる?非居住者のアフィリエイト収入に対する所得税と消費税を徹底解説




私がこのブログを始めてちょうど1年がたちますが、「著名ブロガーが日本の高い税金を理由に海外移住を検討している」というコメントをちらほらと見かけます。

影響力の高いブロガーのこういった発言をきっかに税金に関する議論がおこることは歓迎されるのですが、中には日本および諸外国の税制への正しい理解の欠如のもとに、海外移住=節税のような等式が強調されていることもよく見受けられます。

そこで今回は、日本の税金に対する理解を整理するべく、ブロガーが海外移住した場合の、アフィリエイト収入に対する日本の所得税および消費税の課税関係について解説したいと思います。

ブロガーが海外移住した場合の所得税

結論としては、非居住者となった日(日本を出国した日の翌日)以降、ブログ収入は日本では課税されないと考えられます。

この結論にたどり着くために、まずは用語の意義を整理しつつ、いくつかの前提を置きたいと思います。

用語の意義

  • 非居住者:日本国内に「住所」を有せず、又は、現在まで引き続き1年以上「居所」を有しない個人
  • ブログ収入:アドセンス収入およびアフィリエイト収入

前提

  • ブロガーの海外移住=税務上の非居住者になったものとする
  • ブロガーの海外移住後、日本に恒久的施設(PE:Permanent Establishment)を有しないものとする
  • 海外では、ブログ収入のみを有するものとする
  • ブログの執筆等は、海外で行うものとする

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前提を一つづつ確認しましょう。

税務上の非居住者であること

ひとえに海外移住といっても、その形態によって税務上の取り扱いは異なります。今回のケースでは、日本を離れて生活の拠点を海外におく、いわゆる本来の移住を前提とします。

具体的には、家族がいれば家族ともども日本の住居を引き払い、日本の住民票を抜き、日本には不動産や車を保有せず、海外で個人番号や住民登録等の手続きを行い、海外で不動産契約をし、日本に帰国するのは年に2~3回程度をイメージします。

この場合、そのブロガーは日本の税務上、非居住者となります。なお、上記のうちいずれかを満たさない場合には、実務上、非居住者とみなされない可能性がありますので留意が必要です。

日本に恒久的施設(PE)を有しないこと

恒久的施設(PE)とは、事務所などの事業活動を行う拠点をいいます。(厳密にはもっと細かく定義されますが、ブロガーにおいてはこの理解で十分です)

ブロガーの場合、作業は基本的に自宅やカフェなどがメインとなり、オフィスを有ししているケースは稀かと思いますので、海外移住後は、基本的には日本にPEを有しないこととなります。

ブログ収入のみを有すること

海外移住後、たとえば日本の不動産収入等はないものとします。

ブログの執筆は海外で行うこと

所得の発生源となるブログ執筆等の作業は、主に海外で行うものとします。

なぜ日本で課税されないのか?

所得税法上、非居住者(海外移住したブロガー)の課税範囲は、日本の国内源泉所得に限定されます。

国内源泉所得を平たく言えば、「日本で稼いだ所得」と解釈できます。つまり、非居住者が海外で稼いだ所得は日本では課税されません。

国内源泉所得は、いくつか具体例があり、その範囲が所得税法で定められています。

  1. 恒久的施設帰属所得、国内にある資産の運用又は所有により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得
  2. 組合契約等に基づいて恒久的施設を通じて行う事業から生ずる利益で、その組合契約に基づいて配分を受けるもののうち一定のもの
  3. 国内にある土地、土地の上に存する権利、建物及び建物の附属設備又は構築物の譲渡による対価
  4. 国内で行う人的役務の提供を事業とする者の、その人的役務の提供に係る対価
  5. 国内にある不動産や不動産の上に存する権利等の貸付けにより受け取る対価
  6. 日本の国債、地方債、内国法人の発行した社債の利子、外国法人が発行する債券の利子のうち恒久的施設を通じて行う事業に係るもの、国内の営業所に預けられた預貯金の利子等
  7. 内国法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配等
  8. 国内で業務を行う者に貸し付けた貸付金の利子で国内業務に係るもの
  9. 国内で業務を行う者から受ける工業所有権等の使用料、又はその譲渡の対価、著作権の使用料又はその譲渡の対価、機械装置等の使用料で国内業務に係るもの
  10. 給与、賞与、人的役務の提供に対する報酬のうち国内において行う勤務、人的役務の提供に基因するもの、公的年金、退職手当等のうち居住者期間に行った勤務等に基因するもの
  11. 国内で行う事業の広告宣伝のための賞金品
  12. 国内にある営業所等を通じて締結した保険契約等に基づく年金等
  13. 国内にある営業所等が受け入れた定期積金の給付補てん金等
  14. 国内において事業を行う者に対する出資につき、匿名組合契約等に基づく利益の分配
  15. その他の国内源泉所得

(出典:国税庁「国内源泉所得の範囲」)

では、ブロガーによるブログ収入は、これらのいずれかに該当するのでしょうか?可能性としては、1.の恒久的施設(PE)帰属所得に該当する場合があります。

繰り返しとなりますが、ブログ収入が国内源泉所得に該当しない限り、海外移住ブロガーは日本で課税されません。つまり、ブログ収入が1.の恒久的施設(PE)帰属所得に該当するか否かが判断のポイントとなります。

ブログ収入が1.の恒久的施設(PE)帰属所得に該当するか否かは、そのブロガーが日本にPEを有しているか、つまり日本に事務所等(オフィス)を有しているかどうかにより異なります。仮に日本に事務所等がある場合、そのブログ収入は1.の恒久的施設(PE)帰属所得に該当します。

前提で説明したように、基本的にはブロガーは日本に事務所等を有しないと考えられます。したがって、非居住者であるブロガーは、日本にPEをしない、すなわち国内源泉所得を有さないこととなります。

以上、要件を整理すると分かるように、海外に移住したブロガーのブログ収入は、原則として日本で課税されないと考えられます。

ブロガーが海外移住した場合の消費税

基本的な考え方

そもそも個人ブロガーで消費税の納税義務について認識している方は少ないのではないでしょうか?

間接税である消費税は、負担者と支払者が異なるため、原則として、支払者である事業者が、消費者に代わって国等に対して消費税を納める義務があります。

これは法人や一般の事業者に限った話ではありません。当然、ブロガーもこの消費税の納税義務を負う可能性があります。

この表のように、原則として、Google等から支払われるブログ収入は、消費税の課税対象となり、個人事業主であるブロガーは消費税の納税義務が発生します。

しかし、現実的には、多くのブロガーは消費税の納税義務を有していません。なぜかというと、消費税には、1,000万円の免税点が定められているからです。

かなり平たく言えば、年間のブログ収入が1,000万円以下であれば、消費税の納税義務が免除されます。(厳密には正しい表現ではありませんが、シンプルな説明を優先します)

年間のブログ収入1,000万円といえば、ごく一部のトップブロガーに限定されますので、実は大半のブロガーにとって消費税はあまり関係のない税金となります。

収入源別にみる消費税の取り扱い

前段が長くなりましたが、既に説明したとおり、多くのブロガーは消費税の納税義務がありません。さらに、年間のブログ収入が1,000万円を超える場合でも、その収入の内訳次第では、消費税の納税義務がなくなる可能性もあります。

消費税法における「売上」には、「課税売上」「免税売上」「非課税売上」「不課税売上」の4種類があります。基本的に消費税が課税されるのは、「課税売上」のみとなり、また「非課税売上」または「不課税売上」に該当するものは、消費税が課税されず、1,000万円の判定にも含めないルールとなっています。

では、ブログ収入のうち「課税売上」に該当しないものとは、具体的にどんなものがあるのでしょうか?

結論としては、Google AdSenseからの広告料収入は、「不課税売上」に該当し、消費税の対象外になると考えられます。

なぜGoogle AdSenseからの広告料収入が「不課税売上」に該当するかというと、広告料を支払っているGoogleが海外の法人であるためです。

「不課税売上」とは、消費税の対象外となる取引を指しますが、インターネットを通じて行われるブログ広告のうち、海外の法人から支払われる広告料は「不課税取引」に該当します。

具体的にGoogle AdSenseの規約を確認しましょう。以下は、私のアカウントページにある規約からの引用です。

「当社」または「Google」とは、Google Asia Pacific Pte. Ltd. を意味し、「当事者」とは、お客様と Google を意味します。

私の場合、Google Asia Pacific Pte. Ltd. というシンガポール法人が契約主体となっています。つまり、私が受け取る広告収入は、シンガポール法人からの支払いによるものなのです。

Google Asia Pacific Pte. Ltd.以外にも、契約主体となる可能性のある法人は以下のとおりですが、いずれも日本法人ではありません。

  • Google Inc.(米国)
  • Google Ireland(アイルランド)
  • Google Advertising (Shanghai) Company Limited(中国)

つまり、Google AdSenseからの広告収入は、インターネットを通じた海外(日本国外)からの収入に該当し、消費税の対象外取引となります。

なお、その他の国内ASPやAmazonアソシエイト(アマゾンジャパン合同会社)からの収入は、国内法人から広告料が支払われるものですので、消費税の課税対象となります。

海外移住ブロガーの取り扱い

以上は、国内居住ブロガーを対象とした基本的な消費税の仕組みの説明となります。

海外移住ブロガーの場合も基本的な考え方は同様ですが、所得税とは異なり、海外移住=消費税がかからないというわけではありません。。

特に、海外移住ブロガー(国外事業者)が、国内事業者(国内ASP)から受け取る広告収入は、消費税の課税対象となる点に留意が必要です。

消費税の場合、所得税とは異なり、海外に移住したとしてもブログ収入に対して課税される場合があります。それがこの国内ASPからの広告収入なのですが、結論としては、広告収入は消費税の課税対象となるものの、ブロガーに納税義務は発生しません。というのも国外事業者である海外移住ブロガーが、日本の消費税を国等に納めるのは非現実的であるため、一定の場合を除いて、国内ASP側が代理で納税することになるためです。

したがって、仮に国内ASPからの広告収入がある場合でも、そのブログ収入の金額にかかわらず、原則として海外移住ブロガーに消費税の納税義務は発生しません。

平成27年度税制改正により、国境を越えた取引のうち、特にインターネットを通じた取引に関する消費税の課税関係は複雑なものとなりました。今回取り上げたブログ収入もこの改正の対象となり、取り扱いが不明確な部分も含まれます。

税法に明るくない方が仕組みを理解するには少し時間がかかる分野でもありますので、結論重視でおさえるようにしましょう。

まとめ

以上、ブロガーが海外に移住した場合の、日本の所得税および消費税に関して解説しました。

専門家としてはやや乱暴かもしれませんが、結論重視で考える場合、ブロガーが海外に移住した場合、日本の所得税も消費税も納める必要はありません。(もちろん例外はあります)

そういった意味では、(あくまでも税金の観点から)もし日本の税金が高いと考えるのであれば、特に所得税の低い国に移住するという選択肢があってもいいと思います。

ただし、決断に至るまでには、現地の税制をきちんと理解したうえで、物価や治安、国としての成長性など税金以外の要素にも目を向ける必要があります。

とはいえ、特にブロガーの方にとって節税は移住への大きなモチベーションになると思いますので、その判断においてこの記事が役立てば幸いです。

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税金に関する時事ネタや個人の資産形成などを中心に、英語やExcelを利用した仕事術、たまに仮想通貨について記事を更新しています。